Memories of Tear  第2章(3)

「…………………あああああああん!!」
辺りから騒音が響く。
やけに周りが騒がしい。今は何時だ?そもそも今何してたんだ?
「……………ちゃあああああああん!!」
あ、そうか。今寝てたのか……
「こここ、航ちゃあああああああん!!」
「ってうるさいな!!朝からなんだよ母さん!!」
朝っぱらからの騒音の正体は、異常なまでにハイテンションになっていた母さんだった。
「なんだよじゃないわよ!!あんなかわいい彼女作っちゃってもう!!わが息子ながら罪作りな子だねえ!!」
彼女?母さんは何を言っているんだ?
「ああ、これ夢か………」
「いつまで寝ぼけてるんだ、あんたはーー!!!!」
突然会話に入ってきたのは佐々原だった。
「え、佐々原!?なんで家に!?」
「え、佐々原?この子ひょっとして美樹ちゃんなの!?」
「さ、佐々原です……インターフォンで名乗りましたよね……?」
親子二人から驚かれて、佐々原はちょっとたじたじになっている。
「待てや、俺の質問にも答えろ。なんで俺の家にいる……」
突然起こされた上に、訳のわからない状況になっていることに少し不機嫌になる。
寝起きくらいは静かに居させてほしいのだ。
「コウ君、そんなこと言ったら美樹ちゃんかわいそうでしょ?せっかく久しぶりに遊びに来てくれたのに……」
「いいんです、おばさん。私、清水君にっとては邪魔でしかないから……ごめんなさい、突然押し掛けちゃって。困らせちゃいましたね………」
そう言って佐々原はうつむき、目に涙をためる。……フリをする。
人をからかって困らせるのも昔から変わっていない。もうこの手の演技には、俺たちは騙されない。
だが、その俺たちと言うのに母さんは入っていない。
「ちょっとコウ君!!あなた男の子なんだからしっかりしなさい!!昔一緒に遊んでたことを忘れちゃったの!?」
「いいんです!!もう5,6年も前のことですから。きっともう私のことなんて忘れて、別の人と遊びたいんだよね?」
「イラッ☆もう面倒くさいから表出ろや、佐々原さん。みっちりきっかりしっかり話をしようじゃないか……」
女性陣二人がやけに暴走しているので、いい加減本当に面倒くさくなってきた。
そしてなにより、母親の前ではあまりにも居心地が悪かったので、場所を変えることにした。
せめて、母さんの邪魔の入らないところに行かないと、何時までもこのじゃじゃ馬女は暴走する。
この数年間で行動パターンが変わっていなければそのはずだ。
「母親のいないところに連れこうもうだなんて……何をしようとしてるのかしら?」
「きゃっ。もうコウ君ったら!!やさしくしてあげるのよ!!」
この母親は……自分の息子をなんだと思ってるんだ……?
「ほら、さっさと行くぞ!!」
母さんのことは適当に無視して、佐々原の手を引き外に出る。
「強引なのね……」
どうやら佐々原のやつは、昔よりも面倒くささに磨きがかかっているようだった。
"ばたんっ"と大きな音を立てて扉を閉める。ちなみにうちは一軒家のため騒音は気にしない。
「はぁはぁ………なんで朝からこんな目に……」
「いやあ、ごめんごめん。つい久々の感覚で懐かしくなっちゃって」
「昔はここまでひどくなかったぞ?」
「気にしない、気にしない!!男の子だろ?」
佐々原はゲラゲラと笑う。
「はあ。まあいいや。これからどうしよう?」
はっきり言って、しばらく家に帰りたくない。何を聞かれるかわかったものではない。無視を貫くにも、精神的負担が大きすぎる。
落ち着くまでしばらくどこかで暇をつぶすのがベターだろう。
「ねえ航希。私、今すぐやるべきこと思いついたんだけど、言っていいかな?」
「ん、なんだ?なんかやることあるのか?」
佐々原は気まずそうに目を伏せて言った。
「まず、あんたはその寝間着を着替えるべきだと思う……」
「はっ!!」
そう言えばすっかり忘れていたが、朝起きてそもまま家を飛び出したんだった……
こんな話をしているうちに2,3人人が前を通っていた気がする……
「き、着替えに行くか…………」
結局5分足らずで家に戻ることになったのであった。




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