Memories of Tear 回想〜1〜
村には活気があふれていた。
年に一度の夏祭りの日が近づいているからだ。今も町のあちらこちらから、太鼓や踊りの練習の音が聞こえ、村人たちの活気が伝わってくる。
夏祭りはいつも村の神様を祭るため、盛大に行われる。俺たちは毎年それを楽しみにしていた。
だが、今年は例年以上に楽しみだった。
その理由は、夏祭りの準備に参加で出来るからだ。
今年から新たに山の麓にやぐらを建設することになり、村の大人たちは忙しそうにしている。
そして、小学校の最高学年になった俺たちも、その建設に参加させてもらえるという。
ただ祭りに参加するだけでなく、準備段階からずっと参加していれば、より大きな感動があると父さんさんが言っていた。
だから楽しみでしかたない。
村の仲間4人で準備から参加する初めての夏祭り。絶対に成功させようと思った。
だが……
「ちゃんとできるかなあ……」
思っているだけで、あまり自信はなかった。
「あんたがそんなこと言ってどうすんのよ。いや、まあいつものことと言えば、いつものことなんだけど……」
佐々原はあきれるな口調で俺に注意する。
いつもこいつは、「リーダーなんだからしっかりしろ!!」と俺に言ってくるが、はっきり言って4人の中のリーダーになった覚えはない。
それは中島あたりに任せたいのだが……
「失礼な、今回くらいはちゃんとやってやるって」
「ま、やろうとするだけなら、誰にでもできるからね」
からかうような口調で、いつものように減らず口を叩いてくる。
「はいはい、お二人さん。木材届いたからその辺にしときなー」
ちょうどいいタイミングで中島が割って入る。
どうやら工事用の木材を、大工の泰造おじさんが運んできてくれたようだ。
「それじゃあ、ちゃっちゃと終わらせちゃおうよ!!」
佐々原は張り切って先頭を行く。
それに続くように俺と中島が歩く。
これからやる作業は、やぐらの土台の組み立てで、軽く体力のいる作業だ。
だから、園原は大人の女性陣と一緒に別の手伝いをしている。
ちなみに、佐々原は女子のくせにやけに体力があるから、特別にこっちに参加することになった。
「来たな、坊主ども!!今日の作業はちょいときついぜ!!」
建設場所に着くと、泰造おじさんが先に立って待っていた。
「一人坊主じゃないですけどね」
「そもそも男子二人も、坊主じゃないですけどね。おじさんと違ってふさふさしてますから」
「いいんだよ!!俺からしてみりゃあ、ガキなんてみんな坊主さ!!」
泰造おじさんは、佐々原と中島の口撃にも動じない。
「周平はともかく、わたしまで坊主なの!?納得できない!!」
「どーでもいいから、さっさと初めようぜー……」
この話は面倒くさそうだったから、適当に終わらせることにした。
「おう。そうだな!!とっとと初めようぜ。坊主ども、着いてきな!!」
「いや、だから坊主じゃないから!!」
佐々原の抗議をよそに、作業は始まっていく。
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